
大きな建物をアートで満たす仕事は、たいてい作品から始まります。良い作品を一点ずつ選び、建築ができあがったあとで壁に掛けていく。作品どうしは関係を持たず、建物とも関係を持ちません。PWS では空間から始めました。それぞれの空間の性格を先に読み、そこに何が要るかを決めてから作品を選ぶ。到着ロビー、静かなラウンジ、ライブラリー、庭。トーンは空間ごとに変えましたが、選ぶ基準は全体で一つに保ちました。
建物のアートは、たいてい一点ずつ選ばれ、最後に掛けられます。順序を逆にしました。素材、スケール、配置を、建築を決めるのと同時に決める。そうすれば作品は空間を飾るのではなく、その空間の一部になります。判断の基準は「これは良い作品か」ではありません。「この場所を、その場所らしくするか」でした。素材はばらばらでも、選んだ基準はひとつです。
複合施設全体のキュレーターとアートディレクターを担いました。作品を選定してコミッションし、空間ごとに素材とスケールを合わせ、飾りではなく建築の一部として置いていく。到着ロビーには白い有機的な彫刻を据えて、入ってきた人を受け止める。ラウンジには揺らいでいる藍色の平面アートを入れて動きを出す。静かな廊下には波のレリーフを連ねて、歩くリズムをつくる。ティールのガラス・トーテムと、植栽を納めたアートピースが庭を内側へ引き込み、水と緑のインスタレーションが端の境界を溶かす。この規模では、何を置かないかを決めることが、何を置くかと同じだけ効きます。静かなままにしておく空間があるから、作品を置いた空間が働きます。