
レストランの空気感は、ひとつの仕事だけでは決まりません。客が座る空間、メニューや SNS のための料理の撮られ方、手元のグラフィック。普通は別々に扱われるもの全部が、同時に効いてきます。内装デザイナー、料理カメラマン、グラフィックスタジオがそれぞれに手がければ、トーンはばらけます。客はその理由を説明できません。ただ、まとまっていないことは伝わります。
レストランの空気感は、空間、料理写真、印刷物を別々の人が担うとばらけます。だからその三つすべてを、低照度で素材感のあるひとつのトーンのもとにまとめると決めました。料理も、壁も、メニューも、同じ一文を話しているように。立てたブリーフは、レイアウトではなく気配の設計でした。
内装が、低照度で素材感のある親密さを決めています。温かな木、近い席、注ぐのではなく落ちてくる光。料理写真も、同じ色とトーンの抑制で撮りました。影を残した俯瞰、手に持つ食材、暗い地の土鍋。空間に属して見えるイメージです。実際に属しているからそう見えます。グラフィックも同じ声で、三つ目としてそこに加わります。ひとつの空気感が、三つの形で現れます。客はその空気感を説明できませんが、ただ、ひとつにまとまっていることは伝わります。これはレイアウトではなく気配の設計です。空間まわりの仕事全体が、このトーンの上に立っています。同店はのちにミシュラン一つ星を獲得しました。星をもたらしたのは料理です。ただし、料理と矛盾しない空間があってこそ続く評価でもあります。